蜘蛛〜スパイダー
蜘蛛とわたし
占い師デビューをしたときから、蜘蛛のモチーフをトレードマークにしています。ミステリアスで美しく気持ちの悪い蜘蛛は、私がイメージする禁断の世界の象徴のように思えたからです。爬虫類LOVEな私ですが虫は苦手でした。ところが、雨上がりの蜘蛛の巣に残った雨の滴が、太陽の光を受けて美しく輝く様を見てからは、蜘蛛の巣を探し求めるようになり、巣の主である蜘蛛にも愛着を感じるようになりました。雨上がりにお目見えする蜘蛛の巣のシャンデリアは、蜘蛛と自然が織り成す芸術です。
蜘蛛の誕生
およそ46億年前に、太陽系の惑星の1つとして誕生したと言われる地球。その後、38〜40億年くらい前に、はじめの生物が海の中で誕生。生物が陸上に進出したのは4億年前で、その頃に蜘蛛も出現し、ヒトに近い存在が誕生したのは500万年前くらいと言われています。蜘蛛は私たち人間よりもずっと古の時代から地球に存在し、進化を続けてきたのでしょう。環境に適応しながら、地面を徘徊する種、巣を張ることで空中で活動を行う種、水面を歩くことのできる種が存在し、幅広い活動のステージを獲得している優れた生き物・・・それが蜘蛛なのです。
自然を守る蜘蛛
蜘蛛の行動から未来を予感した歌が平安時代に詠まれていたように、蜘蛛は昔から何かの兆しを感じさせる神秘的な存在だったようです。夜グモと朝グモで吉凶を予感することは、現代にも伝わっていますね。
夜グモ:巣を張り巡らして虫を待伏せる。不吉、姑息、泥棒、凶兆。
朝グモ:天気のいい日に蜘蛛は網を張る。いい1日になる。快晴、吉兆。
「夜蜘蛛来たな」=「よくも来たな」という解釈から「夜グモは殺せ」と言われ、朝グモはお守りとして布袋に入れて持たされることがあったのでしょう。また、ご飯を食べずによく働く女房が、夜は蜘蛛になって旦那を食べにくるという説もあります。この話は、西洋に伝わる吸血鬼やグールの言い伝えにも似ていて面白いですね。
蜘蛛が自然の中で生きるセンスがいかされる蜘蛛の巣の張り方で、お天気を占うこともできるようです。天候の変化を感知して、できるだけ快適な場所に巣を張ろうとする蜘蛛は、空の変化を体で感じ取っているのかもしれません。
★蜘蛛の巣に朝露がついていたら晴れ
★蜘蛛が高い位置に巣を張ると大量の雨が降る
★蜘蛛が低い位置に巣を張ると強風が吹く
★蜘蛛が動き回ると天気が荒れる
恋の喜びや切ない気持ちを伝える数々の歌が詠まれた平安時代には、蜘蛛の古語「ささがに」を用いた恋の歌が詠まれています。この時代の日本では、蜘蛛は恋の天使だったのでしょう。蜘蛛が動き回ったり、着物に蜘蛛や蜘蛛の糸がついたときは、恋しい人に会えると信じられていたようです。蜘蛛は恋を叶えるエンジェルなのですね。また、江戸時代に入ってからも、蜘蛛は縁起物として親しまれ、帯止めや手拭いなどのモチーフに使われていたそうです。
古今和歌集
「我が背子が来べき宵なりささがにの蜘蛛の振る舞ひかねてしるしも」
CA3B0013日本書紀
「我が夫子が来べき宵なりささがにの蜘蛛の行ひこよひしるしも」
土蜘蛛
「我が背子が来べき宵なりささがにの蜘蛛の振る舞ひかねてより」
これらは、衣通姫(そとおりひめ)が“蜘蛛が巣をかける様子がはっきり見えるから、いとしいあの人が夜に来るはず。”と詠んだ歌です。
源氏物語”帚木”では、藤式部の丞が“蜘蛛が盛んに動き回る夕暮れに訪れた私に、明日の昼まで待てとは、意味がわかりません。”と詠んでいます。
「ささがにの振る舞ひしるき夕暮れにひるま過ぐせと言ふがあやなさ」
蜘蛛とお話
蜘蛛は黒猫や蝙蝠たちと共に、闇の存在として受け止められることもあります。キリスト教では、善良なミツバチと対極をなす邪悪な蜘蛛とされているようです。一方、知恵や言葉・文章を司る神であり、神話によっては、人類の誕生に関わる大いなる存在になっていることもあります。実際に蜘蛛は、ハリウッド映画の中で演技をするくらいに賢いとどこかの記事で読んだことがありましたし、タランチュラをペットにしている飼い主さんは、蜘蛛は飼い主が誰かを理解しているし、人になつくし、賢くて可愛いとおっしゃっていました。
中国の伝説「七夕」の織姫の別称の1つに、「蜘蛛姫(ささがにひめ)」があります。「ささがに」は、蜘蛛を意味する古語です。ギリシャ神話の中にも、はた織り娘アラクネと、はた織りの腕を誇る女神アテナの腕比べのエピソードがあります。アラクネは、神と人間の恋愛模様を織り、神々の怒りを買って蜘蛛の姿に変えられてしまいました。夫である牽牛に恋い焦がれ、はた織りの仕事をおろそかにした織姫と、神と人間の恋を織ったアラクネは、それぞれ罰を受けましたが、罰せられたあともはた織りを続け、蜘蛛が蜘蛛の巣をつくるように、美しい織物を生み出しています。
<西洋占星術をわかる方への余談>
私の出生図では、8ハウス魚座で金星と小惑星アラクネが合になっています。オカルトと蜘蛛に惹かれるのも当然ですね。
ネイティブアメリカンに伝わるホピ族の神話では、「蜘蛛の祖母(スパイダーグランドマザー)」という神の使いが、地下に誕生した虫を導いて人間を生み出しました。創造主の力によって誕生した生命体をより高い次元へと導く役割を担った蜘蛛の祖母は、土器の焼き方や布の織り方を人々に教え、最後に言葉を与えたと言われています。まさに知恵の神様ですね。
ラヴクラフトの小説「クトゥルフ神話」では、アトラク=ナクアという蜘蛛の神が登場します。人間と同じくらいの大きさの蜘蛛の姿で、昆虫器官を多数持ち、深淵の谷間で巣を張り続けているのですが、何のために生まれ、何のために巣を張るのかは謎です。巣が完成した時に世界が滅びるという不吉な一説も・・・。
芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」では、お釈迦様のお遣いとして蜘蛛が登場していますね。ほかにも、アルプス地方の鬼蜘蛛(オニグモ)は、背中に十字架の模様があることから神の祝福を受けた生き物とされています。古代インドの教典「ウパニシャド」では、糸を伝って上昇する蜘蛛が自由の象徴になっているなど、吉凶合わせて多くの意味を与えられ、世界中から注目されている蜘蛛なのです。
蜘蛛の不思議
2008年11月にニュースになった蜘蛛の宇宙事件があります。蜘蛛が宇宙で巣を張れるかどうかを調べる実験で、スペースシャトル「エンデバー」で乗組員と一緒に2匹の蜘蛛が宇宙に飛び立ったときのことです。2匹の蜘蛛のうち1匹が、国際宇宙ステーションで行方不明になりました。蜘蛛は容器に入れられ、封印された状態で運ばれていたはずなのに、1 匹しか見当たらないという怪事件が起きたのです。2 匹が同じ容器に入れらていたのかどうかは、当時の記事に記されていませんでしたが、もしも同じ容器に入れられていて共食いしたとしても、蜘蛛は酵素で口外消化し、相手の体液を吸い尽くして食すので、外皮などが食べかすとして残るはず。けれど、何もなかったのだとか。容器に入れたはずの蜘蛛がきちんと入っていなかったのか?それとも、イソギンチャクやナメクジ、ヤドカリのように、蜘蛛もテレポーテーションができるのでしょうか?